契約書について 雪渕行政書士事務所

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解説:契約書

契約書の重要性

契約は双方の合意が成立すれば、それだけで法律上有効となります。従って、契約書を作成しなくてもその効力は変わりませんが、契約の相手が契約の存在を無視したり、契約の内容どおりに履行してくれないと、契約を交わしたという何らかの証拠をつきつけて、責任を追求しなければいけません。

こういうとき、何よりも確実で強力な証拠が契約書となります。ましてや契約書に署名押印した当事者は、その内容を争ったり、効力を否定することはできません。さらに契約の際に第三者の立会があり、その署名押印があれば双方ともにぐうの音も出ません。

契約の原則・種類

(1)契約自由の原則

■契約締結の自由
契約を締結するか否かを選択する自由であり、契約締結の自由は申込みの自由と承諾の自由に分けられます

■相手方選択の自由
契約の相手方を選択する自由

■契約内容決定の自由
どのような内容の契約を締結してもよいという自由

■契約方式の自由
どのような方式で契約を締結してもよいという自由
*契約自由の原則と言っても、何でもかんでも自由ではなく、それが法的に有効にはならず、法的拘束力が認められない例外があります
例)公序良俗違反となる内容は無効。つまり国家、社会の公な秩序、良識ある一般的道徳概念に反するような契約は無効となります

(2)諾成契約と要物契約

■諾成契約(原則)
一方が申込み、もう一方が承諾すれば、つまり当事者同士の合意があれば成立します。
承諾とは、申込みと合わせて契約を成立させることを内容とする意思表示のことです。
 例)商店で客が商品を持ってレジに置き「これお願いします」店員「ありがとうございます」
これを「諾成契約(だくせいけいやく)」といいます。

■要物契約(ようぶつけいやく)
これに対して、何らかの物の引き渡しがあって初めて成立する契約を「要物契約」といいます。例えば、金銭消費貸借契約は、貸借の対象となる金銭の交付があって、初めて契約が成立します

(3)有償契約と無償契約

■有償契約
契約の全ての過程において対価的な性質をもつ出捐(経済的損失)があると認められる契約。
要するに何かをする代わりに、その報酬をもらう契約がすべて有償契約となります。
*弁護士、司法書士、行政書士等士業が本人に代わって受託する業務は委任契約なので原則無償ですが、特約により報酬を頂く契約をするので有償契約となります

■無償契約
契約の全ての過程において対価的な性質をもつ出捐(経済的損失)が存在しない契約。
要するに無償でやってもらう契約

(4)双務契約と片務契約

■双務契約
契約当事者双方が対価的性質を有する債務を負っている契約
商品の「売買契約」を例にとると、売主は買主に対して財産権(商品)を移転する義務(債務)があり、買主は売主に対してその代金を支払う義務(債務)がある。従って、売主と買主の双方がお互いに債務を負っているため、売買契約は双務契約となります。
他に「賃貸借契約」、「雇用契約」、「請負契約」、「和解契約」、「組合契約」などが双務契約になります。

■片務契約
契約当事者の一方のみが対価的性質を有する債務を負っている契約
典型的な例が「贈与契約」で、贈与者が物をあげるという債務を一方的に持っている「贈与契約」(負担付贈与も含む)、「消費貸借」(利息なしの金銭消費貸借等)、「使用貸借」(無料で物を貸し借り)が片務契約となります。
「消費貸借」、「委任契約」、「寄託契約」、「終身定期金」は有償となる場合は双務契約、無償の場合は片務契約となります。

(5)典型契約の分類整理

「典型契約」とは一般に行われる契約の典型として,法律が特別の規定を設けている契約。有名契約ともいいます。
民法は贈与,売買,交換,消費貸借,使用貸借,賃貸借,雇用,請負,委任,寄託,組合,終身定期金,和解の13種を規定しています。

契約種類 双務
/片務
有償
/無償
要物
/諾成
内容(民法上の定義)
贈与 片務 無償 諾成 当事者(贈与者)の一方が自己の財産を無償で相手方(受贈者)に与えることを内容とする契約プレゼント
売買 双務 有償 諾成 売主が特定の財産権を買主に移転することを約束し,他方,買主は売主に対して代金を支払うことを約束することによって効力を生じる契約 買い物
交換 双務 有償 諾成 当事者が互いに金銭の所有権以外の財産権を移転することを内容とする契約 土地等価交換
消費貸借 片務 無償
(有償)*1
要物 当事者の一方(借主)が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方(貸主)から金銭その他の物を受け取ることを内容とする契約 借金、住宅ローン
使用貸借 片務 無償 要物 当事者の一方(借主)が無償で使用及び収益をした後に返還をすることを約して相手方(貸主)からある物を受け取ることを内容とする契約 無料で物を貸し借りする行為
賃貸借 双務 有償 諾成 当事者の一方(貸主、賃貸人)がある物の使用及び収益を相手方(借主、賃借人)にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することを内容とする契約 賃貸アパート、レンタルショップ
雇用 双務 有償 諾成 当事者の一方が相手方に対して労務に服することを約し、相手方がこれに対して報酬を与えることを約束する契約 サラリーマン
請負 双務 有償 諾成 依頼を受けた者(請負人)がある仕事を完成することを約束し、その注文者がその仕事に対して報酬を支払う契約 建築・建設工事、システム開発等
委任 片務
(双務)*2
無償
(有償)*2
諾成 依頼者(委任者)が受任者に対してある特定の法律行為をしてもらうように委託し,受任者がその委託を受けることを承諾することによって効力を生じる契約 弁護士への業務の依頼
寄託 片務
(双務)*3
無償
(有償)*3
要物 当事者の一方が相手方のために保管をすることを約して,ある物を受け取ることによって効力を生ずる契約 倉庫、荷物預かり所(コインロッカー)、知人宅に荷物を預ける、金融機関への預金
組合 双務 有償 諾成 出資者が特定の営業者の営業のために出資し、生じた利益の分配を受ける契約 ジョイントベンチャー、共同法律事務所、投資ファンド、有限責任事業組合(LLP)
終身定期金 双務
(片務)*4
有償
(無償)*4
諾成 自己、相手方または第三者が死亡するまでの期間、定期に一定の金銭その他の物を相手方または第三者に給付し続けることを内容とする契約 個人年金のようなもの
和解 双務 有償 諾成 当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約束することによって効力を生じる契約 紛争を解決する様々なシーン

以下は特殊な扱いとなります

*1
【消費貸借】利息付きの場合は、有償双務
*2
【委任】報酬の支払がある場合は、有償双務。
受任者は無償であっても善管注意義務(善良なる管理者)を負う
*3
【寄託】報酬の支払がある場合は、有償双務。
預かる者は有償の場合のみ善管注意義務を負う。無償の場合は自分の所有物を保管する程度の注意を払うだけでよい
*4
【終身定期金】対価がない場合は、無償片務

契約書の標準的な構成

これは金銭消費貸借契約書の例です。
友人間の貸し借りなので、無利息で、返済は毎月元金の均等分割払いとし、遅延損害金の支払い条項を加えた内容としています。

金銭消費貸借契約書(個人間)

(1)タイトル

具体的に何の契約なのかわかる名前にします。「売買契約書」、「金銭消費契約書」等

(2)収入印紙

印紙が貼っていないからと言って、その契約書が無効になるわけではありませんが、印紙税法に定められた印紙を貼らないと脱税になります。契約当事者が複数いる場合で人数分契約書を作成する場合、それぞれに同額の印紙を貼って消印(印紙と書面にまたがって)する必要があります。

(3)前書き

契約当事者を示し、契約の主たる目的を表示します。

(4)目的条項

契約の目的を条文ごとに詳細に記載します。
契約の種類ごとに記載すべき内容が変わります。

(5)後書き

契約書の体裁を整える意味と、契約書を何通作成したかを記載します。

(6)作成日付

重要な記載事項となります

(7)当事者の表示

ワープロで記載された名前に押印したり、自筆署名+押印もあります。
会社等団体の場合は代表者の記名押印が必要です。
代理人の表示があれば、ここで行います。

(8)その他

契約書が複数枚になる場合、別紙目録等を添付する場合は、それらが一体のものであることを示すために、契約当事者双方が綴じ目に割印(契印)を押します。

割印(契印)見本

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